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記事 - 20 4月، 2024

カシミール:決定的な解決策

カシミール問題に対する平和的解決策が肝要だ。これは、隣国且つ兄弟国であるインドとパキスタンの対立関係を解消することにもつながる。かつて、人口統計を含む全ての側面において一つの国家を構成していたインドとパキスタン。分裂を経験したものの、両国が真の兄弟国であることに違いはない。

 

植民地主義国の陰謀で、インドとパキスタンは分裂した。支配国は、膨大な人口、広大な領土、無限の可能性を秘めたインド帝国という強国を野放しにしたくなかったのだ。異なる宗教や地域間の争いを扇動したのは、他でもない植民地支配国なのである。事実、植民地時代以前、各地域はインド亜大陸の一員として平和に共存していた。

 

虐殺や暴力を孕む血なまぐさい宗教争いの根源は、英国植民地主義に他ならない。

 

植民地支配国の陰謀により、宗教に基づき、インドからパキスタンを分離するのが唯一の解決策であるという結論が導き出された。この分裂の概念は、まさに反動的な植民地主義を反映したものである。悲しいことに、両国における宗教間の衝突や礼拝堂の放火や破壊は、分裂後も後を絶たない。

 

資源を蝕む分裂と衝突を繰り返しても、亜大陸の人々にとって何らの利益にもならない。殺し合いが続く現状を遺憾に思う。

 

だが、内容ある解決策は、グローバリゼーション時代の要求に答える形でじきに表面化してくるはずだ。今後、巨大な統合体が台頭することで、世界地図には新たな線引きがなされ、重大課題が山積の厳しい競争の時代に生き残る資力を持たない国家は自然淘汰される。

 

新たな世界地図は、感情や宗教、民族性を基準にするのではなく、地理的地域を軸に形成されていく。この新しい世界を構成するのは、アフリカ連合、欧州連合、独立国家共同体、ASEANなどの巨大な国際機構である。インド亜大陸諸国も、このような統合体を形成すべく再結成しなければならない。

 

カシミール:

 

宗教上の犠牲を蔑視する者は、大義のため自らの血や生命までも捧げる者を無責任だと見なす。彼らは、こうした犠牲を憎むべきテロ行為と同化するが、このような見方をする者は、カシミール問題のみならず、あらゆる諸問題の解決に向けた仲介役となることはできない。イスラム教、ヒンドゥー教、仏教、シーク教などの信者は、価値ある大義のために身を捧げることもある。我々はこうした犠牲に敬意の念を示さなければならない。

 

彼らを軽蔑の眼で見下しても、カシミールやその他の国際問題の解決にはつながらない。

 

インド、パキスタン、カシミールという三つの異なる国家が存在する事実を、世界と同地域の人々は、今はっきりと認識し始めている。この認識こそが問題解決の頑強な基盤となる。

 

インド亜大陸を構成していた数百もの藩王国は、かつて似通った環境下にあったが、今では状況が変わった。カシミール、ハイデラバード、ジュナガードの共通の状況も今は存在しない。

 

ハイデラバードとジュナガードのインド帰属は、インドとパキスタンの二ヵ国分裂を招いた分割の原則を基盤とした住民投票で決定されている。カシミールの独立が他州の分離主義を扇動するという論点は効力がない。

 

そもそも、他州の独立は単純に不可能なのだ。各藩王国のインドまたはパキスタンへの最終帰属は、分割の原則と後に国連安保理が決議した住民投票によって決定された。藩王国によっては、住民会議を実施したケースもある。国連決議や分割の原則が存在する限り、州知事または州議会が上記取り決めに抵触する法案を制定することはできない。

 

カシミールの特異性:

 

インド亜大陸諸国と共通する民族構成(アーリア人、モンゴル人、テュルク人、アフガニスタン人)と言語的多様性を有しながらも、カシミールは独自の歴史を辿ってきた。同地域の宗教は、古来、仏教とバラモン教の紛争から始まり、それを受け継ぐヒンドゥー教主流の時代を経て、イスラム勢力進出によるイスラム王朝の時代へと変遷してきている。

 

その他の特徴としては、英国植民地時代に同地方を所有した封建領主(単一家系)が、約1世紀もの間、独占支配を続けた事実である。カシミールに自己統治の拡大措置が許されたのは何故か?藩王国がインドまたはパキスタンへの帰属を迫られた際、カシミールが例外として扱われたのは何故か?

 

カシミールと同様に例外と見なされた二つの藩王国(ハイデラバードとジュナガード)の帰属問題が解決した後も、カシミールは未解決のまま放置されたのは何故か?カシミール州政府の指導者が、インド政府指導者と同様の首相という肩書を有するのは何故か?カシミールは独自の旗と議会を有するのは何故か?これらすべての疑問が、カシミール地方が独特且つ特別な存在であることを証明している。カシミールの歴史と情勢は他の州とは異なる。特定宗教の信者数を議論に持ち出すのは生産的な方法ではない。

 

インド亜大陸の宗教事情は、非常に複雑且つ厄介な問題である。植民地支配国はこの状況を巧妙に利用し、広大なインド帝国を分断して反目し合う集団に分割するという「分割統治」政策を実施した。インドは、ヒンドゥー教国家ではない。ヒンドゥー教、イスラム教、仏教、シーク教で構成される多宗教国家なのである。すべての紛争をヒンドゥー教とイスラム教間の対立とひとまとめにするのは論理的ではない。カシミールは、イスラム教国家ではなく、ヒンドゥー教、イスラム教、仏教が混在する国家であり、同地域内に住む人々すべてが属する国家である。イスラム教徒はパキスタンに属し、ヒンドゥー教徒はインドに属するというルールがあるとすれば、インド亜大陸の分裂化は一層深刻化するだろう。人々は安定を享受できず、解決策は指の間をすり抜けていく。

 

カシミール紛争の根源である、こうした非論理的かつ有害な発想には、きっぱりと見切りをつけなければならない。イスラム教やヒンドゥー教等の宗教に関係なく、カシミールはカシミール住民のものなのだ。論理的な解決策が見出されなければ何の進展も期待できない。議論は宗教間の攻撃で始まり、提案されるのは感情的で不毛な論理だけとなる。

 

議論に宗教を持ち出すのは、問題解決に対する真剣味が欠けていることの現れである。宗教、民族、言語の違いを議論しても、解決策は見つからない。

 

カシミール住民の共通の利益を追求してこそ、解決策が見出されるのだ。このグローバリゼーションの時代において、人々を結びつけているのは、共通の宗教、言語、民族性ではなく、共通の利益なのである。現在、異なる人種、異なる宗教や言語を持つ人々は、共通の利益で統合されている。

 

感情的な結びつきは、共通の利益に勝るものではない。さらに、カシミール問題の解決に向けた誠実、真剣、公平な取り組みには、隣国の利害関係も考慮しなければならない。宗教および感情的な論議に影を潜め、この利害関係が言及されることは稀だが、重要な水資源を有するカシミールと国境を接する国は4ヵ国ある。

 

これら隣接国にとって、カシミールには安全保障上の利害も存在している。他の原因を度外視し、カシミール紛争の唯一の原因として宗教にレッテルを張り、糾弾するのは不公正である。カシミール住民は、特定当事者による利己的な利益搾取の犠牲になってはならない。

 

カシミールは、カシミール全住民のものである。インド及びパキスタンの隣国と友好関係を築きつつ、ネパールとブータンに見習い、周辺4ヵ国の緩衝地帯としての役割を果たすことができる。インド、中国、パキスタン、アフガニスタンの間に分離地帯を作ることで、地域平和の増強に貢献できるのだ。東ティモールの独立は、模倣すべき良い例である。

 

近い将来、世界は巨大な統合体で占められるようになる。グローバリゼーションの課題に対する対応能力を持たない国家という単位は消滅する。したがってカシミール独立は、グローバリゼーション到来以前に想定されたような恐ろしい衝撃波にはならない。カシミール、ブータン、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、モルディブ、スリランカ、インドは、欧州連合、アフリカ連合、ASEANに続く、巨大なインド亜大陸共同体の一員となるからだ。

 

国家単位が取り残されるような状況に向けた能力確保として、共同体を構築しておかなければ、グローバリゼーション時代におけるインド亜大陸の将来はない。ドイツやフランスと同等の経済力や技術力を有しているとしても状況は同じだ。ドイツ、フランス、その他の欧州諸国ですら、グローバリゼーションに対応可能な欧州連合に加盟していなければ、今の時代に生き残ることはできないのだ。

 

国家に置換して新世界を構成する巨大な共同機構は、単独の軍隊、安全保障枠組、市場、通貨、中央銀行、さらに最も重要な要素として、他の統合体に対する単独の交渉窓口を持つことができる。

 

グローバリゼーション時代の複雑な環境下において、もはや一国家の交渉力は効果を持たない。統合体への加盟こそが、運命を共にする地域住民にとっての最善の解決策なのである。過去に使われた反動主義政策がもたらしたのは悲劇と崩壊のみである。イスラム教、ヒンドゥー教、その他すべてのカシミール人にとっての故郷、独立主権国家のカシミール万歳!

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